残響

 最近は歌謡曲をあまり聴いていない。正確には、聴かないようにしている。
 理由は簡単。歌声が頭に残るから。
 流行の曲というのは、やはり概ねキャッチーにできていて、意識せずとも耳に残るようなっている。何でもないときは別に気にならないのだけれど。考え事をしたいときや、頭を休めたいときには、その歌声が邪魔になる。
 個人的な感想なので、一般的ではないのだろうが。私は、考えごとをするとき、途中でイメージを言葉に落とし込む作業をする。そして、その際に、頭の中で歌詞がまわっていると、作業が進まない。
 歌詞も考えごとの言葉も、どちらも音声ということで、私の場合は、頭の中の同じ部分で扱っているようである。両立できればよいのだが、残念ながらそれほど器用ではない。
 こんな時に一番よいのは静寂である。しかし、静寂が難しいときは、せめて歌詞のない曲を聴くようにしている。これだけでもずいぶんと違う。
 もっとも、歌詞が気にならなくなるくらい集中して作業をすればよいのだが、そんな境地に達するには、まだまだ修行が足りないようだ。
 一方、頭を休めたいときには、頭の中の人工的な音をすべて消してしまうといい(逆に落ち着かないという人もいるだろうけど)。奥の方の疲れた部分が楽になる気がする。
 しかし、音声が氾濫している現代の世の中では、これはなかなか難しい境地である。今のところ、個人的には、無心で体を動かしてみるのがよいようだ。このあたりは、きっと各人でやり方が異なるのだろう。
 最近は、電車やバスの中で、ずっと音楽を聴いている人をよく見かける。それはそれでよいのだけれど。たまには何でもない音に耳を澄ましてみるのもよいのではと思う。
 虫の声、風の音、街の雑踏…。注意して聴いてみれば、いつもと違った世界が広がっているかもしれない。
 もっとも、傍からは、単にぼーっとしているようにしか見えないのだろうけど…。