不織布マスクを考える

 少し前に、不織布マスク等が海洋ゴミになっていることが報道されていた。また、街中を歩けば、不織布マスクがあちこちに落ちているのを見かけるだろう。特に、理研でのシミュレーションから、不織布マスクが最も飛沫やエアロゾルの抑制効果が高いと報道されたことで、周りを見ても不織布マスクへのシフトが進んでいることが実感できる。
 それでは、実際に国内で消費されている不織布マスクはどれくらいなのかを調べてみた。直接的な数字は見つけられなかったが、マスクの国内生産・輸入量や在庫数量の推移から、ざっと見積もって、2020年では100億枚程度と思われる。2021年はもう少し多いだろうか。もちろん、市中に出回ったものがすべて消費されている訳ではないのだろうが、新型コロナの流行によって消費量は大きく伸びていることがわかる。
 一方で、最近、有料化で話題になったレジ袋の消費量はどうだろうか。諸説はあるようだが、こちらは数百億枚のようである。不織布マスクよりも多いが、桁が変わるほどではない。ただ、重量換算すれば、もう少し差は開くかもしれない。
 さて、なぜここで唐突にレジ袋を引き合いに出したかといえば、いずれも原料は石油由来のプラスチックだからである。不織布マスクの不織布は、化学繊維(化繊)の一種で、天然素材(もしくは生分解性素材)ではない。これが、冒頭の海洋ゴミの問題につながっている(正しく捨てていないという問題も大きいが)。
 さらに、近年、カーボンニュートラルが耳目を集め、石油等の使用量を削減しようという動きが、世界のあちこちで高まっている。先に述べたレジ袋の有料化も、そのような流れの中にある。
 新型コロナの流行によって、世界中で不織布マスクの消費量が増えたことは、石油使用量削減の流れからは逆行する。しかし、だからと言って、感染対策の面からは、使用量を大きく減らすことは難しい。ならば、できる限り化繊である不織布の使用量を削減しながら、代替となる材料・商品開発を進めるべきだろう。
 例えば、植物素材による生分解性の不織布自体は、すでに市場に各種存在する。コスト面さえクリアすることができれば、植物素材からなる不織布マスクへの置き換えは十分に可能だろう(LCAは必要だが)。もっとも、そのコスト低減が最大の難題で、補助金や炭素税等の政策的なテコ入れがないと実現は難しそうではあるが。
 一方、別の理研でのシミュレーションによれば、不織布マスクでは、空気抵抗が大きいため、隙間からの漏れが大きくなることが示されている。そのため、普段の装着時の性能で見れば、不織布マスクでも布マスクでも、感染予防効果は大きく変わらないのだろう。できる範囲で、化繊でないマスクや繰り返し使用できるマスクを使用することは、すぐに対応できる方策として有効である。当然だが、不織布マスクの「二重マスク」は論外である。
 もちろん、課題は不織布マスクだけではない。例えば、テイクアウトや宅配の増加にともなう容器や包装(これらも大半はプラスチックである)等の増加も同様である。これらが全体の消費量に占める割合は少ないと言う向きもあるが、別の観点もあり、できることから手を付けることが大切である。
 このように、予想外のできごとによって次から次へと課題が生じることは、今後もきっと避けられない。しかし、課題に対して各人が地道に対策や啓蒙を講じ続けなければ、課題の解決へは近付かないのだということは、忘れてはいけない。