春になると、多くの花が咲き始める。いや、気にしてみれば、四季折々に多くの花が咲いている。
 花を愛でたことのある人は多いだろう。花を見て、綺麗だとか、可愛いだとか思ったこのある人は多いだろう。
 少し思い返してみるだけでも、身の回りに多くの種類の花々を思い出すことができる。
 桜、梅、桃、ツツジ、ひまわり、秋桜、タンポポ、菫、百合、紫陽花、金木犀、椿、等々…。
 もちろん、名前を知らない花もたくさんある。
 大きな樹に咲いている花もあれば、道端でひっそりと咲いている花もある。野に咲く花もあれば、街中で咲く花もある。
 そんな花を見たときに、人は心が穏やかになったり、癒された気分になったりもする。
 人々が花を愛でるようになったのは、いったいどれくらい昔なのだろうか。
 私は詳しいことは知らないのだが、きっとずいぶんと昔なのだろうとは思う。人々の生活の中に、遠い昔から、花は入り込み、その一部になっていたのだろう。
 では、どうして人は花を愛でるのだろうか。
 花の咲いた後に食物となる果実や種子が取れることを知ったからだろうか。花を求愛に用いることで異性を射止めやすくなったからだろうか。単に緑の中で目立つ色彩に注意が引き付けられているだけなのだろうか。
 本当のところは分からない。
 植物にとってみれば、花は、自身の種を残し、遺伝子を後世に伝えていくための手段の一つである。そこには、純然とした生存競争の世界があったはずである。
 もしかしたら、人が花を愛でるのは、植物によって、花を愛でる生き物が残るように淘汰されてきた結果なのかもしれない。
 そんなことを考えてみるのも面白い。