竜騎士伝説

Dragon Knight Saga

グリスカについて

 現在、アーケルバスタに関する書物としてほぼ完全な形で残っているものは、「グリスカ」(全21巻)のみであろう。「グリスカ」は、各巻が厚さ数センチもある大判本であり、研究者にかなりの量の資料を提供してくれている。「グリスカ」には題のない多くの物語が叙事詩としてつづられており、それらが絡み合いながら全体として一大叙事詩を形成するという、文学的にも非常に興味深いものとなっている。含まれる内容は、神話から庶民の生活まで多岐に渡っており、それ故、今ではアーケルバスタの研究に欠かせない重要な書物と言うことができる。なお、余談ではあるが、巻20と巻21は構成が他の巻と幾分異なっていることから、後世に書き足されたものであるという説が根強い。
「グリスカ」自体はクウェニルア語で書かれており、そのままでは読解が困難であることと、完全な状態の原書(写本ではあるが)はハルトニア家に1部存在するのみであることから、現代語に翻訳したいくつかの書物が出版されている。なお、クウェニルア語は当時の大大陸のほぼ全土で共通語として使用されていた言語であり、クウェニルア語自体についても多数の研究書が出版されている。「グリスカ」とは、吟遊詩人が酒場などで歌う詩の総称であり、この本もタイトル通りそういった歌物語の収集を目的として作成されたものと考えられている。
 なお、「竜騎士伝説」は「グリスカ」の巻18及び巻19中に含まれる物語を元として、筆者が抜粋や加筆修正を行い一つの物語の形に整えたものである。今回、「竜騎士伝説」を記す上での原書中の物語の取捨選択は筆者の独断による。できる限り原書に忠実であることを心がけたが、原書中には互いに矛盾する物語などもあり、そのままではまとまった物語を作り上げることが困難であった。物語としてのつながりをもたせるために、意図的に創作を加えた部分もある。アーケルバスタに興味のある読者には、原書である「グリスカ」を一読されることをお勧めする。なお、「竜騎士伝説」の序章にある「ナシトルフォン・クウェント」は、巻1の内容の要約である。